【塔ノ岳】光に輝く街並み

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山の中腹で展望がひらけた場所に出た。眼下には秦野の街並みが広がっている。その向こうには蜃気楼のようにうっすらと相模湾をのぞむことができた。

休憩を兼ねて立ったまま、しばらく街を見ていた。日差しを受けた眼下に見える街並みは輝いていた。家屋やビルの屋根や窓ガラスに太陽の光を反射させて発光しているのだ。小さな光が無数に集まり、その輝きはまぶしいと感じるほどであった。

街は煌々と灯る夜だけでなく、昼もこうやってにぎやかに光が乱舞しているんだなと思った。その光の下で誰もが皆、喜怒哀楽、いろいろな思いを抱えながら日々の暮らしを営んでいる。きっと光がこれほど降り注いでいるということを意識せずに。光とともにあるということなんて気づかずに。僕自身だって、こんなに光が降り注いでいるなんていうことは普段気にも留めていない。

生活を照らしてくれる光は間違いなく平等なのだ。それは自明のことであるかもしれないが、その気づきは僕を微笑ませた。一つ一つの光の下で、それぞれの異なる生き方がある。そんなことを思った。僕はなかなかその場を後にすることができなかった。

やがて夜が来たら家々は明かりを灯し、今とは異なる姿を見せてくれるだろう。夜は星々がここからきれいに見えそうだ。星の下に広がるたくさんの生活の灯り。

光の下で、光と共に、たくさんの人間が生きているのだ。